「大人の恋愛ストーリー大賞」用に書いた作品です。
結果はすでに発表されていて、大賞にも佳作にも選ばれなかったので、公開しても問題はないと思いますので、のせてみました。
それではどうぞ。
『世界の女神展』
せっかくの誕生日に、どうして美術館でデートなのだろう?
絵を見ること自体は嫌いじゃないけど、特に詳しい訳じゃないし、今日は私の誕生日なんだから、もっと他に行くところがあったはず。なのに、どうして…?
そんなことを思いながら美術館の前まで行くと、彼からメールがきた。
「今、ラクシュミという女神の絵の前にいるから来て」
一体どういうことだろう? もしかして、私をビックリさせようとして、何かたくらんでいるとか。 私が喜ぶような…例えば、そうプロポーズとか、そういうのだったらいいけど…。
とりあえず、私は美術館に入って、ラクシュミという女神の絵を探した。
……あった。なになに…ラクシュミはヒンズー教の女神で…と説明文を読んでいたら、また彼からメールがきた。
「オーナっていう女神のところにいるから」
…どうやら、何かしらの理由があってこういうことをしているようだ。彼は意味もなく、いたずらっぽいことをする人ではない。
言われるがまま、オーナの絵を探し出すと、次はヴェスタという女神のところに来るようにというメールがきた。やはり何かある。私は最初のラクシュミのところまで戻って、絵と説明文をじっくり読み返して、同じように、オーナとヴェスタの絵についてもしっかりと凝視した。
それによると、オーナはケルトの女神で、ヴェスタはローマの女神。…それぞれに「女神」ということ以外の共通性はない。でも、そこには何かしらのヒントが隠されているはず。次はなんだろう?
「アイリーンの前で待っています。今度はちゃんと待っているから」
内容から判断するに、次が最後のようだ。
アイリーンの絵は、さっき通り過ぎたから、場所はわかっている。急いでそこに向かうと、絵の前に彼が立っていた。
「お待たせ」
お待たせってなによ? と言いたい気持ちもあったがぐっとこらえて、アイリーンの絵と説明文を見た。ギリシャの女神か…。
「実は今日、プレゼントしたいものがあって、こんなことをしたんだ。……4人の女神のイニシャルをつなげると、どうなると思う?」
イニシャル?
Lakshmi
Oonagh
Vesta
Eireen
『LOVE』? 私が言うと、彼は上着のポケットから、小さな箱を取り出し、私によこした。開けると、中には指輪が入っていた。
「そう、LOVE。誕生日のプレゼントとして、僕と結婚なんてどうかな?」
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無題
レイチェルさんへ
落選はしましたが、自分ではお気に入りの作品です。